【講師著書から読み解くビジネスの真髄】101

受刑者の診療に取り組む「プリズン・ドクター」という仕事

今、WOWOWで『堀の中の美容室』というドラマが放送中で、その中で受刑者たちが美容師免許を取得できるよう指導を行う「刑務所職業訓練美容科の美容技官」という方が出てくるのですが、その医療版がプリズン・ドクターでしょうか?

内科医師の中でも難関である総合内科専門医の資格を持ち、メディアでも活躍する医師・おおたわ史絵さん。

父親に憧れて医師になったおおたわ史絵さんは、父親が遺した下町の診療所を引き継ぎ15年間、開業医として地元の人達を診ると共に、テレビ番組でコメンテーターとして活躍されてきました。

「一旦ここで、自分の人生を少し見直してみようかな」と診療所を閉じた後、知り合いからの誘いを受けて刑務所を見学することになり、「私、向いているかもしれない」と思い刑務所の中の医療の世界に飛び込まれたそうです。

プリズン・ドクターとは?

プリズン・ドクターとは、刑務所内で受刑者を診療する医師のことで、肩書は『法務省矯正局医師』というそうです。プリズン・ドクターは日々、受刑者と向き合い、どのような仕事をしているのでしょうか?

おおたわ史絵さんは、2018年に被収容者の医療や健康管理などを行う国家公務員である『矯正医官』になり5年。医師として刑務所で被収容者の診療をする仕事で、それらを担当する医師のことをプリズンドクター=矯正医官と呼ぶそうです。

常勤の方もいますが何ケ所か兼任している方が多く、他の病院での外来や大学病院で研究しながらプリズンドクターをしている人も。

おおたわ史絵さんは月に10日ほど、2か所の刑務所で診療をされているようです。

プリズン・ドクターになった理由

一般的には仲々知られることのない職業ですが、矯正医官の募集はいつでも行われているようですが、医者の世界でもあまり知られていないのが現状で、おおたわ史絵さんも知りませんでしたが、たまたま知り合いを通じて誘われたことがきっかけだったとか。

なぜ、私がこの仕事を選んだのか。それはこれまで自分は何で医者になったのかという漠然とした疑問がずっとあったからです。父親が開業医で、周囲の期待に応えるべく、義務感から医学部を受験して医者になりました。父親が亡くなってからは開業医を引き継いでやっていました。それでこのまま終わってもよかったかもしれないですが、残りの人生、「どれだけのことができるのか」と考えていたんですね。

「塀の中」の診察室の様子

診察を受けたいと思っている患者は大勢います。診察を受けるためには、まず看護師が定期的に回診してそれぞれ体調はどうか聞きに行く。看護師は刑務官が資格を取って兼務している場合が多く、屈強な男性看護師もいます。男の受刑者の場合には、たいてい男性看護師がつくようで、これは当然ながら患者が暴れるなど、不測の事態に対処できるからです。

看護師の判断で、ドクターに診せた方がいいとなると診察に連れて来られます。内科、精神科、施設によっては、整形外科や眼科、歯科などの医師がいます。一般的な病院の違いは、待合室に並んで待つ間、「交談禁止」といって私語は許されておらず、患者同士が喋ったりすることは禁止されているので、みんな壁の方を向いてじっとして座っているそうです。

出所後に個人情報を悪用されないようにするため診察室では、医師や看護師の名前を呼び合うことはなく、看護師は「おおたわ先生」とは呼ばず、「真ん中の机の先生に」というように患者に指示します。更に医師と患者との間の床には線が引いてあって、それ以上近づいてはいけないという決まりになっているそうです。

・・・といったように、我々の知りえない世界のことも書かれており、興味深いです。

矯正医療の在り方

受刑者には懲役の義務がありますから、更生させた後、キチンと働けるようにも、心身の健康を保持していくことも大事で、そういう健康な状態を作っていかないと、外に出た後もまともな社会生活ができなくなります。するとまた盗みや詐欺などに手を染めることになる。再犯率を下げるためにも、受刑者の心身を健康にすることも重要です。

刑務所から出所した人は社会復帰を目指しますが、塀の外に出てみると仕事、お金、人脈がなく、生活していけない人は多いです。それが再犯に繋がり、実刑を受けてまた刑務所に戻ってきてしまいます。 プリズンドクターは刑務所にいる間の苦痛を取り除いてあげることはできます。身体・精神を健康にするための治療はできますが、それだけでなく人としてきちんと生きていけるように導いてあげることも大切です。

・・・「罪を犯さなければ生きられない」という生まれながらの社会的弱者がいることが衝撃的でもありました。産みの親が揃っていることや学校に通うこと、家庭で食事ができることが当たり前ではない人がいることに改めて驚きを感じました。

塀の中で日々何が行われているのか?初めて知ることばかりの内容で、医師の目線での刑務所アルアルが軽妙なタッチで描かれていたり、一方で受刑者が収監されなければならなかった背景や境遇がシリアスに描かれていたり、社会が抱える問題点も鋭く突いており、色々考えさせられる事も多く、勉強になる一冊です。

病まざる 老けざる ホンマの医学』(おおたわ史絵さん

・知名度が有り、話の内容も分かりやすく、かつセミナーの表題とで大きくずれない。

・講演を聞いた約80%の方よりアンケートが提出され、全てのかたが「聞いてよかった。これからに活したい。」という声ばかりでした。

 ・聴講者参加型のクイズ等もあり、飽きさせない講義内容であった。

・大好評!でした。おおたわさんは気さくに私たちに接してくださり、充実した時間でした。

・参加者アンケート(5段階評価、回答数146)の結果、平均4.6となりましたので、9点といたしました。

・業務およびプライベートでも役に立つ講演内容であり、話術も巧みであることから、あっという間の1.5Hでした。

・今回、同僚と一緒に参加したので、同僚との理解は断然深まりました。