【講師著書から読み解くビジネスの真髄】111

生きる知恵

演出家・宮本亞門さんの著書『上を向いて生きる』は、人生の困難に直面したとき、どう心を保ち、前を向いて歩むかを綴った一冊です。ガンの発覚、コロナ禍での舞台中止、過去の自殺未遂や引きこもり・・・その全てを「生きる知恵」に変えて語ってくれます。

宮本亞門さんが自らの人生経験。 ――自殺未遂、引きこもり、突然のがん発覚、そしてコロナ禍―― を通して「生きるとは何か?」を問い直し、前向きに生きるためのヒントを綴ったエッセイです。

宮本亞門さんは前立腺がんを経験し、それを「命の勲章」と表現しています。コロナ禍で舞台が次々と中止になった際、「人々に勇気と希望を届けたい」と考え、YouTubeで「上を向いて歩こう」プロジェクトを立ち上げました。

宮本亞門さんご自身が、「生きることが辛い」と感じてきたからこそ、同じように悩む人に寄り添える言葉を紡いでいます。・・・様々な悩みを抱える我々に「心が軽くなる」「前を向ける」ためのヒントを与えてくれる内容となっております。

人生は悲劇にも喜劇にもなる

同著書のサブタイトルにもなっておりますが、「人生の悲劇は見方を変えれば喜劇にもなる」について、同じ出来事でも、どう受け止めるかで意味が変わる・・・という事を伝えております。

「人生は悲劇にも喜劇にもなる」とは、事実そのものではなく“解釈”が人生を決めるという宮本亞門さんの哲学です。舞台演出のように、自分の人生をどう演出するかで、悲劇も喜劇に変えられるのです。

出来事そのものは変えられない
病気や事故、仕事の失敗など、人生には避けられない困難が訪れます。宮本亞門さん自身も、自殺未遂や引きこもり、突然のがん発覚などを経験しました。 

解釈次第で意味が変わる
例えば「ガンになった」という事実は悲劇的に見えますが、宮本亞門さんはそれを「命の勲章」と捉え直しました。すると恐怖や絶望ではなく「生きることの意味を深く考えるきっかけ」へと変わります。

演出家としての視点
舞台や映画では、同じ脚本でも演出次第で悲劇にも喜劇にもなります。人生も同じで「自分がどう演出するか」で物語の色が変わる、と説きます。

「穴ではなく生地を見る」とは?

著書の中で登場する象徴的な比喩が、「穴ではなく生地を見る」です。これはドーナツを例にした「ものの見方」を示す言葉で、人生や日常の捉え方を変えるヒントになっています。

「穴ではなく生地を見る」とは、不足ではなく充足に目を向ける生き方を象徴する言葉です。宮本亞門さんは、自身の病気や困難を通して「あるものに目を向ける」ことで心が救われることを体験し、その知恵を読者に伝えています。

ドーナツの穴と生地
ドーナツには「穴」があります。人はつい「ない部分=穴」に目を向けてしまいがちですが、実際には「ある部分=生地」が大半を占めています。・・・不足や欠けているものではなく、すでに持っているものに目を向けることが大切だという教えです。

不足感から充足感へ
「お金が足りない」「時間がない」「才能がない」と“ないもの”に意識を向けると、人生は苦しく感じます。一方で「支えてくれる人がいる」「健康な部分がある」「今日できたことがある」と“あるもの”に目を向けると、心が軽くなり前向きになれます。

 ●がん経験からの気づき
宮本亞門さんは前立腺がんを経験し、「失ったもの」ではなく「まだできること」に目を向けることで、人生を肯定的に捉え直しました。これが「穴ではなく生地を見る」という考え方に結びついています。

最善を尽くす生き方

完璧を求めるのではなく、その時々でできる“最善”を尽くすことに価値があるという考え方です。これは、困難や不安に直面したときに心を軽くし、前向きに生きるための大切な視点です。

困難な状況でも「今できる最善」を選び取ることで、人生はより豊かで安心感のあるものになると教えてくれます。

完璧主義からの解放
人は「もっとできたはず」「完璧にやらなければ」と思いがちですが、それは心を追い詰めます。宮本さんは「その瞬間にできる最善を尽くすことが大切」と説いています。 

状況に応じた柔軟さ
がんの治療やコロナ禍での舞台中止など、思い通りにならない状況でも「今できること」を探し、そこに力を注ぐ。これが“最善”の積み重ねになります。

舞台演出家としての哲学
舞台は常に予期せぬトラブルが起こります。完璧な公演は存在せず、その場でできる最善を尽くすことが観客に感動を届ける唯一の方法だと宮本さんは語ります。

同著は、宮本亞門さんが自らの苦難を通して得た「生きる知恵」を、ユーモアと温かさをもって伝える一冊です。困難を「悲劇」ではなく「進化」として受け止めるための視点をくれる本です。

宮本亞門さんの言葉は、日常の小さな不安から大きな試練まで、私たちの心を支えてくれる灯りのように感じます。

・・・今日も「穴」ではなく「生地」を見て、上を向いて歩いていきたいものです。

上を向いて生きる 〜不安の時代に、笑顔と想像力を〜』(宮本亞門さん

・参加者からは「涙が出た」「自分の人生を見つめ直すきっかけになった」といった感想が多く寄せられ、共感と勇気を与える講演として高く評価されています。

・登校拒否や自殺未遂など、亞門さんの体験を聞いて、自分も前を向いてみようと思えた。違うことを否定していた自分に気づき、もっと人を受け入れたいと思った。

・子どもたちに伝えたい言葉がたくさんあった。教育現場でも活かせる内容だった。

・人権講演会として非常に有意義。多様性を尊重する社会づくりに役立つ。

・リーダーは自分をさらけ出し、場を和ませる存在であるという言葉が印象的だった。

・世阿弥の『離見の見』を引用し、冷静に自分を見つめる視点の大切さを学んだ。 

・参加者からは「命の尊さを実感した」「前向きに生きる勇気をもらった」といった感想が多く寄せられ、医療・地域・教育の現場で高く評価されています。

・命と向き合う勇気をもらった。がんの告知を受けたときの不安や葛藤を率直に語ってくれて、共感できた。

・“いつ死ぬかは神のみぞ知る。生きていることに集中しよう”という言葉に心を打たれた。